星 周作 Blog

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敬天愛人

数ヶ月前に西郷隆盛が聖書を読み、そして、人にも聖書を教えていたことや西郷隆盛が雅号の「南洲(なんしゅう)」の名で書いた「敬天愛人」(天を敬い、人を愛す)についてフェイスブックで投稿したり、当ブログでも簡単に書いたこともありましたが、もう少し詳しく「敬天愛人」について書くことにしました。

 

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敬天愛人」という言葉が、歴史上に現われたのは、18世紀の中国、清の時代に遡ります。当時、清の皇帝の康熙帝(こうきてい)は、中国に進出していたキリスト教イエズス会ドミニコ会フランシスコ会というカトリックの3つの宣教団体の、どれを、中国で認めるか悩んでいました。

イエズス会は中国に最も早く進出した宣教団体ですが、聖書の教えとは異なる中国古来の祭礼や祖先崇拝を認めていました。

一方、ドミニコ会フランシスコ会は、そのようなイエズス会の教えは、カトリックの教えに反すると非難、カトリックローマ教皇イエズス会を非としたことから、皇帝の康熙帝ローマ教皇と対立、結局、イエズス会だけが中国で伝道が認められ、康熙帝は、その認定のしるしとして、イエズス会の教会堂に飾る額に「敬天愛人」の文字を刻(こく)し贈呈したのです。

 

明治になり、英国留学から帰ってきた思想家の中村正直(まさなお)が、英国の牧師で思想家のサムエル・スマイルの「自助論」を翻訳して「西国立志編」として出版した本の中に「敬天愛人」という言葉が登場することになります。

 

以上より、「敬天愛人」を西郷隆盛が生み出した言葉ではないことがわかります。

 

中村正直は、キリスト教精神を要約した言葉として「敬天愛人」を使いました。

英国でキリスト教の影響を受けた中村正直は、後に、自ら、キリスト教の洗礼を受け、明治天皇にも洗礼を受けることを勧めた人物です。

西郷隆盛(1828年~1877年)は中村正直(1832年~1891年)とは同時代に生きた友人関係でしたから、英国留学を終えた中村正直に西欧事情やキリスト教について詳しく聞いたに違いありません。

おそらく、当時すでに、西郷隆盛は漢訳(中国語)聖書を読んでいたことが明らかになっていますから、自ら信奉していた陽明学(ようめいがく)を超えた真理が、聖書キリスト教にはあると感じ取ったのかも知れません。

 

敬天愛人」の「天」がそもそも何を意味するのか、様々な意見がありますが、儒教で説く人間を超越した力とか法といったものではなくキリスト教聖典である聖書が啓示する、「天」におられる天地万物の創造主(神)を指しているものと考えます。

 

カトリックでは、正に神を「天主」と呼び、日本ではキリスト教を「天主教」と言い、信者が集う建物を「天主堂」とも言いました。

 

無教会主義のキリスト者(クリスチャン)の内村鑑三は、西郷隆盛の「敬天愛人」の教えには、抽象的な神ではなく、人間に語りかけられる人格を持たれた創造主(神)の認識があることに驚きを隠していません。

 

陽明学という道しるべによって、人生を歩んでいた西郷隆盛は、聖書の真理と出合うことによって、それまで、漠然としていた「天」というものの実態がハッキリしたのでしょう。

それまで、知識として理解していた「天」が、西郷隆盛の前に、信仰の対象として現れたのです。

 

敬天愛人」を簡単に説明すれば「天におられる父なる神を敬い(愛し)、隣人を愛する」ということでしょう。

そして、「敬天愛人」からすぐに思い浮かぶ聖書のことばは、マタイの福音書22章37節から39節に書かれているイエス・キリストのことばです。

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正に、このイエス・キリストのことばを端的に表現しているのが「敬天愛人」なのです。

 

上記の中で登場する「康熙帝」と「中村正直」について簡単に触れたいと思います。

康熙帝清朝の全盛期時代をつくりだした第四代皇帝です。

1661年に8歳で即位し、61年間にわたって統治した(在位1661年~1722年)、中国の皇帝でも最も長い統治期間であり、屈指の名君とされ「大帝」とも称されました。

彼は強健な体をもち、酒もタバコも飲まず、昼夜勉学に励み、キリスト教宣教師がもたらす西洋学術に非常に興味を持ち、幾何学天文学統計学など学んだと伝えられています。

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↑ 康熙帝読書図(北京・故宮博物館蔵)

 

中村正直は、明治時代の啓蒙思想家、教育者、文学博士です。

1870年(明治3年)にサムエル・スマイルの「自助論」を翻訳して「西国立志編」の邦題で出版し100万部以上を売り上げ、福沢諭吉の「学問のすすめ」と並ぶ大ベスト・ロングセラーとなりました。

「自助論」の序文にある「Heaven helps those who help themselves」を「天は自ら助くる者を助く」と訳したのも彼です。

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↑ 中村正直と「西国立志編

 

最後にマタイの福音書6:9をご覧ください。

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私たち人間及び天地万物を創造された天にいます父なる神(創造主)を敬い、そして、隣人を愛することができますよう祈ります。 

 

私たち人間が進化によって存在しているのではなく、聖書が啓示する創造主(神)によって創造されたことについて書いた過去のブログ「創造か、進化か」(全15回)を未読の方は、そちらも、ぜひご覧ください。

↓ ↓ 下記のタイトル又は画像をクリックして下さい。
hoshishusaku.hatenablog.com

 

最後までご覧いただきありがとうございます。

・・・・・

<参考資料>

百万人の福音(いのちのことば社

詳説・世界史(山川出版)

西郷隆盛と聖書(フォレストブックス)

ウィキペディア

 

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★私は、聖書に書かれている内容を、誰が読んでも明らかに比喩的な言葉を除き、字義通り理解した上で信じています。したがって、創造主である唯一の神の存在を確信し、イエスをキリスト(救い主)と認める者です。しかし、カトリック教会等のいずれの教会にも属していない無教会者です。あらゆる新興宗教のいずれの信者でもありません★

・天地万物の創造主だけが神

・万物・人間を創造せずして神たる資格なし

・商売繁盛の神、龍神など「〇〇神」と「神」の文字をくっつけても、万物を創造せずして神たる資格なし

・釈迦が万物を創造した方なら、釈迦を神と崇めますが、万物・人間を創造せずして拝む対象に非ず。

〈私の信条〉

盲目的ではなく根拠に基づき理性的に、キリストを信じ尽くし、聖書を信じ尽くします。

★(HN)星周作:(本名)馬場忠博(1956年生):馬場聖書研究室★

<私は聖書の神を信頼する>

私は、命の源である天地万物の創造主である神が愛をもって私たち人間を創造してくださったと確信しています。愛である神が、天災、戦争、病などの苦難の多い人生で人間の一生を死によってすべて終わらせてしまうとは、私には考えられません。聖書に書かれている通り、神、キリスト・イエスを信じる者たちが、死後復活して神の御国において祝福の中で永遠の命を生きていくことを信じています。そのようにしてくださる神を信頼して、聖書の学びを継続します。

〈イエスを信じる者は永遠の命をもつ〉ヨハネによる福音書3:16)ことを私は確信します。

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