異邦人(その②)
(その①)の続き。
前回に続き本日も異邦人であるアラブ人の祖イシュマエルについて見ていきたいと思います。
まず、次の聖書箇所をご覧ください。
創世記17:15~21
19節後半で創造主(神)は「わたしは彼とわたしの契約を立て、それを彼の後の子孫のために永遠の契約とする。」と宣べられています。
これは、アブラハム契約は、長男のイシュマエルではなく、次男のイサクとその子孫に継承されるという創造主(神)の宣言です。
しかし、イシュマエルの子孫であるアラブ人たちは、これを承認していません。
ここで、アラブ人のムハンマドから始まり大多数のアラブ人が信奉しているイスラム教について少し触れたいと思いますが、私が中学生の時の歴史ではムハンマドではなくマホメットと教えられ、イスラム教ではなくマホメット教ないし回教(かいきょう)と教えられていました。
イスラム教徒(ムスリム)にとって旧約聖書も新約聖書も一応聖典ではあるのですが、コーラン(クルアーン)が最も重要な聖典として位置付けられています。
旧約聖書ではイサクがアブラハム契約を継承する者としているのに対して、コーランではイシュマエルが契約継承者だとしているのです。
さらにアブラハムが創造主(神)に「いけにえ」として捧げようとしたのは(創世記22章)イサクではなく、イシュマエルであったと教えています。
周知のことと思いますが、ムハンマドの生誕地はアラビア半島の現在のアラブ諸国の一つサウジアラビアのメッカ(マッカとも言う)であることを念のため付け加えておきます。
20節ではイサクの息子ヤコブからイスラエルの12人の族長が出ましたが、イシュマエルからも12人の族長が出ると創造主(神)は宣べています。
続いて、創世記25:12~18をご覧ください。
13節から16節は前記した創世記17:20に記されているイシュマエルから12人の族長が出ると創造主(神)が約束されたことの成就です。
18節では「イシュマエルの子孫は、ハビラから、エジプトに近い、アシュルへの道にあるシュルにわたって、住みつき」とありますが、ハビラはユーフラテス川上流地域にある地と考えられ、アシュルはアッシリヤを、シュルはエジプトからアッシリヤに至る主要な道(幹線道路)のシナイ半島の北西の地と考えられます。
つまり、北はユーフラテス川から南は紅海まで、西はシナイ半島の北西から東はアッシリヤ(帝国)の東(バビロンの西)までの地に住みついたということです。アラブ人がイシュマエルの末裔であることは、この地理的なものから充分推測できるのです。
同じ18節の後半の「それぞれ自分のすべての兄弟たちと敵対して住んだ。」とあるようにアラブ人たちは部族抗争が絶えるだけでなく、前回ブログでも扱ったようにイスラエル人(ユダヤ人)に対する敵対意識が現在に至るまで続いているのです。
しかし、紀元前8世紀頃に南のユダ王国で活動した預言者イザヤは、この世の終末のことを次のように預言しています。
イザヤ書19:23~25
このように終末には、異邦人のエジプト(アラブ)及び当時残虐非道さで知られていたアッシリヤでさえも創造主(神)に仕える民となり、イスラエルとともに祝福すると万軍の主(創造主)は宣言しておられるのです。
現代のアラブ人とイスラエル人(ユダヤ人)の中東戦争及びその後のパレスチナの地での敵対を見ると政治的な解決はとても難しいように思われます。
しかし、創造主(神)のみことばに偽りはありません。
必ず成就します。
過去のブログで何度も引用したイザヤ書55:11を再度引用します。
聖書に基づくイシュマエルについての説明はここまでです。
次回も引き続き異邦人について触れますが、登場人物(主役)は一体誰でしょうか?
本日はこれで終わりません。
第一次世界大戦(1914年~1918年)の最中に起こった「アラブの反乱」を描いた大作映画「アラビアのロレンス」(1962年公開)のことを少し書きたいのです。
皆さんは、映画「アラビアのロレンス」を観ましたか。
観ていない方はぜひレンタルDVDで観ることをお勧めします。
まだ観ていない方が、イシュマエルの末裔のアラブ人がオスマン帝国の支配から独立するための戦いを描いた映画「アラビアのロレンス」を楽しむために、予め知っておいた方がより一層映画を楽しむことができる事柄を、老婆心ですが以下書きたいと思います。
第一次世界大戦は連合国(イギリス・フランス・ロシア・アメリカ・日本ほか多数)と同盟国(ドイツ・オスマン帝国・オーストリア=ハンガリー帝国・ブルガリア王国)との戦争でしたが、当時のアラブ人は自らの国家を持っておらず、そして、オスマン帝国の支配に不満を持つアラブ人が多くいました。
そこで、連合国のイギリスは戦いを優位に進めるためにアラブ人にオスマン帝国への反乱を起こさせるために、アラブ人の有力者フサインに接触し「アラブの人々がオスマン帝国に勝利した暁には、アラブ独立国家の建設を支援する」と約束します(1915年のフサイン・マクマホン協定)。マクマホンとはイギリスの外交官ヘンリー・マクマホンのことであり、当時駐エジプトの高等弁務官でした。
そして、アラビア語やアラブ文化に詳しいイギリスの陸軍将校トマス・エドワード・ロレンスが工作員としてアラブ人の元に送り込まれ、フサインの息子ファイサルの軍事顧問として、当時アラブの各部族は部族間の争いが絶えなかったのですが、各部族を一時的に束ねてオスマン帝国と戦うことになったのです。
オスマン帝国が占拠する港湾都市アカバを陥落し、(ヒジャース)鉄道を爆破し、オスマン帝国の主要都市ダマスカスも陥落させたロレンス率いるアラブ人でしたが、「フサイン・マクマホン協定」に基づくアラブ独立国家の約束をイギリスは果たすことはありませんでした。
それは、イギリスはアラブとの約束の他に、オスマン帝国領土をイギリスとフランスとロシアの三国協商で分割統治する秘密協定(サイクス・ピコ協定)を結び、さらにユダヤ人にもパレスチナの地にイスラエル建国の約束(バルフォア宣言)をするという、よく知られている「イギリスの三枚舌外交」があったからです。
上記の「サイクス・ピコ協定」は第一次世界大戦中の1916年5月16日にイギリスの中東専門家マーク・サイクスとフランスの外交官フランソワ・ピコによって原案が作成されたものです。
また、「バルフォア宣言」は第一世界大戦中の1917年11月2日にイギリスの外務大臣アーサー・バルフォアが、イギリスのユダヤ系貴族院議員の第2代ロスチャイルド男爵ライオネル・ウォルター・ロスチャイルドに対して送った書簡のことです。
第一次世界大戦の末期にイギリスはフランスとともにオスマン帝国領土の山分けをさっさと進め、アラブ人が住んでいた領域はシリア、レバノン、ヨルダン、パレスチナ、イラクなどと(人工的に)小分けにして独立させ、シリアと北アフリカ諸国は主にフランスが、イラク、ヨルダン、パレスチナはイギリスが、直接、間接に統治するようになったのです。
要するに「イラク」とか「ヨルダン」とか、歴史的にはあまり馴染みのない地名を冠した人工的な国に分けられてしまったのです(酒井啓子著「中東の考え方」より一部引用)。
以上のことを踏まえ、雄大な砂漠の中をラクダに乗って駆け巡るロレンスとアラブ民族を描く映画「アラビアのロレンス」(DVD完全版)をお楽しみください。
因みに、映像の中で私が感動した10数秒前後の際立ったワンシーンがあるのですが、DVDに収められている特典映像の中で「未知との遭遇」「E・T」などの監督スティーブン・スピルバーグも「奇跡」と絶賛したワンシーンです。
初めて映画を観る方は、どのシーンがその「奇跡」のシーンなのか、貴方の感性がスティーブン・スピルバーグの感性と一致するか、探してみてはどうでしょうか(特典映像は本編の後で観ることをお勧めします)。
最後に手許にある映画パンフレットの記事を一部引用します。
「私はロレンスを現代に生きた最も偉大な人物と信じる。私は二度と彼のような男を見ることは出来ないだろう。彼の名前は歴史の中に生きている戦史の中に、そしてアラブの伝説の中に生きている(イギリスの元首相:ウィンストン・チャーチル)」
「謀略、反乱、闘争に明け暮れるアラビアの天地に登場したのが『アラビアのロレンス』と呼ばれ、『無冠の帝王』と恐れられたT・E・ロレンスだった。すぐれた指導者そして卓越した謀略家、さらにたぐいまれな戦術家としての素質と天賦の才能は中東、英、米、仏、独の政府当局に脅威を与え、彼の一挙一動が戦局に動揺をもたらした。そして、アラビアにおける彼の行動は以後、世界各国の情報謀略活動に大きな影響を与えた。日本でもロレンスのやり方を手本にして謀略活動を行ったといわれる。満州事変の口火となった盧溝橋(1928年)と柳条橋における鉄道爆破がそれで、この事実はあまりに有名。」
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★私は、聖書に書かれている内容を、誰が読んでも明らかに比喩的な言葉を除き、字義通り理解した上で信じています。したがって、創造主である唯一の神の存在を確信し、イエスをキリスト(救い主)と認める者です。しかし、カトリック教会等のいずれの教会にも属していない無教会者です。あらゆる新興宗教のいずれの信者でもありません★
・天地万物の創造主だけが神
・万物・人間を創造せずして神たる資格なし
・商売繁盛の神、龍神など「〇〇神」と「神」の文字をくっつけても、万物を創造せずして神たる資格なし
・釈迦が万物を創造した方なら、釈迦を神と崇めますが、万物・人間を創造せずして拝む対象に非ず。
〈私の信条〉
盲目的ではなく根拠に基づき理性的に、キリストを信じ尽くし、聖書を信じ尽くします。
★(HN)星周作:(本名)馬場忠博(1956年生):馬場聖書研究室★
<私は聖書の神を信頼する>
私は、命の源である天地万物の創造主である神が愛をもって私たち人間を創造してくださったと確信しています。愛である神が、天災、戦争、病などの苦難の多い人生で人間の一生を死によってすべて終わらせてしまうとは、私には考えられません。聖書に書かれている通り、神、キリスト・イエスを信じる者たちが、死後復活して神の御国において祝福の中で永遠の命を生きていくことを信じています。そのようにしてくださる神を信頼して、聖書の学びを継続します。